現在、研究を発表すべく準備中ですので、今回は当クリニックの専門分野である『メタボリックシンドローム』『糖尿病』『成人の肥満』『小児の肥満』についての一般的な説明を紹介させて頂きます。
 肥満―特に内臓脂肪型肥満―が原因で体の代謝バランスが崩れ虚血性心疾患をはじめとする動脈硬化性疾患を起こす危険性の高い病態をメタボリックシンドローム(Metabolic Syndrome)と呼んでいます。背景には遺伝的要因、加齢、食生活や運動不足などの生活習慣の変化が深く関与しています。生活習慣病として知られる肥満、高脂血症、糖尿病、高血圧症はいずれも動脈硬化を起こす要因ですが、メタボリックシンドロームではこれらが軽い場合でもそれぞれを併せ持つことにより動脈硬化が促進されます。従って、メタボリックシンドロームは虚血性心疾患や脳梗塞などの動脈硬化性疾患の予防において大変重要な病態といえます。
 厚生労働省の調査では、
(1) メタボリックシンドロームが強く疑われる者と予備軍と考えられる者を併せた割合は、男女とも40歳以上で特に高い。
(2) 40−74歳でみると、男性の2人に1人、女性の5人に1人が、メタボリックシンドロームが強く疑われる者又は予備軍と考えられる者。
と報告しています。

 成人のメタボリックシンドロームの診断基準
(1) 腹腔内脂肪蓄積
 ウエスト周囲径 男性≧85cm 女性≧90cm
(内臓脂肪面積≧100cm
2に相当)
(2) 中性脂肪≧150mg/dlかつ/またはHDLコレステロール<40mg/dl
(3) 収縮期血圧≧130mmHgかつ/または拡張期血圧≧85mmHg
(4) 空腹時血糖≧110mg/dl
(1)に加えて(2)〜(4)のうち2項目以上(薬剤治療を受けている場合は、それぞれの項目に含める)
  
 小児においてもメタボリックシンドロームが発生することが明らかとなり、診断基準が作成されました。
 小児のメタボリックシンドロームの診断基準
(1) 腹腔内脂肪蓄積
 ウエスト周囲径≧80cm 
(2) 中性脂肪≧120mg/dlかつ/またはHDLコレステロール<40mg/dl
(3)収縮期血圧≧125mmHgかつ/または拡張期血圧≧70mmHg
(4)空腹時血糖≧100mg/dl
(1)に加えて(2)〜(4)のうち2項目以上(薬剤治療を受けている場合は、それぞれの項目に含める)
 糖尿病はインスリン作用の不足による慢性高血糖を主徴とし種々の特徴的な代謝異常を伴う疾患群でありますが、その発症には遺伝因子と環境因子がともに関与します。代謝異常の長期間にわたる持続は特有の合併症を来たしやすく、動脈硬化症をも促進することとなります。
 成因は、(I)1型、(II)2型、(III)その他の 特定の機序、疾患によるもの、(IV)妊娠糖尿病、に分類されます。1型は発症機構として膵β細胞破壊を特徴とします。2型はインスリン分泌低下とインスリン 感受性の低下(インスリン抵抗性)の両者が発症にかかわります。(III)は遺伝素因として遺伝子異常が同定されたものと他の疾患や病態に伴うものとに大別 することができます。

 診断は慢性高血糖の確認が必要です。空腹時血糖126mg/dl以上または75g糖負荷試験2時間値200mg/dl以上あるいは随時血糖値200mg/dl以上が糖尿病型と判定されます。持続的に糖尿病型を示すものを糖尿病と診断します。(日本糖尿病学会による)
 厚生労働省の糖尿病実態調査によると、糖尿病を強く疑われる人は690万人で、糖尿病の可能性を否定できない人を合わせると1370万人となります。その中でも糖尿病が強く疑われる人の28%、糖尿病の可能性を否定できない人の26.9%が現在肥満であります。また、過去の肥満度と糖尿病の現況を見ますと、糖尿病が強く疑われる人の52.7%、糖尿病の可能性を否定できない人の37.3%が肥満でありました。糖尿病の発症に肥満が大きく係わっていることが分かります。
 肥満は脂肪が一定以上に多くなった状態ですが、一般的には体重と身長から計算されるBMI(Body Mass Index)と呼ばれる指標により判定されます。

 BMI=体重(Kg)/(身長(M)×身長(M))で計算されますが、日本肥満学会の判定基準ではBMI 22を標準として25以上を肥満としています。例えば身長170cm・体重80Kgなら80÷(1.7×1.7)=27.7となります。BMI 25以上になると糖尿病、高脂血症、高血圧などにかかりやすくなります。

 平成15年の国民健康・栄養調査(厚生労働省)によると男性では30歳〜60歳代の3割以上にBMI25%以上の肥満が見られました。肥満の割合は30歳代が32.7%、40歳代が34.4%、50歳代が30.9%、60歳代が30.7%。20年前の昭和58年に比べ、すべての年齢層で肥満者が増えています。一方、女性の肥満者の割合は、昭和58年、平成5年に比べ、70歳以上では増加、40〜50歳代では減少しております。

 肥満の原因は遺伝素因と環境要因の組み合わせであることが次第に明らかになってきました。しかし、最近の肥満している人の急激な増加は遺伝要因だけでは説明できません。環境要因、つまりカロリー摂取過剰と運動不足、生活様式の変化が大きく影響していると考えられます。減量というと、ダイエットが思い浮かびますが運動不足の影響も大き いと考えられています。エアロビックス(有酸素運動)は体脂肪を燃やし体脂肪を減らし、アネロビックス(無酸素運動)は筋肉量を増やし基礎代謝を高め、これにより太りにくい体質となります。

 肥満している人の食事を記録して貰って摂取カロリーを計算すると、標準体重と運動量から計算される適正カロリーを大きく上回っていることが多いようです。それぞれの食事内容を詳しく分析し、栄養バランスの取れた適正なカロリーの食事をすることが大切です。

 肥満している人は食べ過ぎと運動不足を改善すれば肥満が解消することは分かっているがやめられない(できない)ということが時々あります。肥満の治療は長期間にわたるため、個人の心理・社会的側面を分析し、治療継続を図ることが大切です。

 今は健康ブームもあり、“ダイエット”や“痩せる”と歌ったサプリメントが巷に氾濫しています。肥満治療は食事療法と運動療法が前提となりますが、サプリメントはそれらの効果を促進するものであると考えると、ヒトで十分に研究されたものを選ぶ必要があると思われます。
肥満者(BMI≧25)の割合 (平成15年国民健康・栄養調査)
 小児の肥満も成人肥満と同様に脂肪が一定以上に多くなった状態ですが、年齢別、性別、身長別標準体重から計算される肥満度が20%以上、かつ有意に体脂肪率が増加した状態を肥満としています。

肥満度= (体重(Kg)-標準体重(Kg))×100/標準体重(Kg)で表されます。

 小児の肥満は平成12年度の学校保健統計調査によると、およそ10人に1人の学童が肥満児となっていますが、世界中の国々でも肥満が蔓延しています。小児の肥満は成人肥満へと移行します。成人では糖尿病をはじめとする肥満関連疾患が増加の一途を辿っており、小児期からの肥満予防や治療が大切と考えられます。

 小児の肥満も、成人の肥満と同様に様々な疾患に伴う2次性肥満を除けば、遺伝素因と環境要因の組み合わせが過体重の主な原因であると考えられております。

 小児の肥満の治療の3本の柱は食事、運動、生活様式の改善ですが、成人の肥満と異なり、高度の肥満で糖尿病や肝障害などの肥満に伴う合併症がない限り、成長期にあるため極端な栄養制限は発育を阻害してしまうため行いません。運動することによりエネルギー消費が増し、筋肉量が増えて太りにくい体質になりますが、食事療法と一緒に行うことで効果が高まります。肥満治療は長期に及ぶため、生活様式の改善は肥満治療を成功させる上で一番大切であると言えるかもしれません。1、普段の食事内容を調査して太りやすい食品を排除し指示された食事を調理する、2、テレビやコンピューターゲームなどの運動量の少ない生活習慣を止めて、屋外での遊びを増やす。3、無理のない目標体重を設定する。肥満小児がこれらをどのように行うかを学んで実践していくことが必要です。更に、小児の肥満治療を成功させるには両親の治療への参加と熱意が大切です。

診察時間:午前9時〜12時、午後2時〜6時(2時〜3時は乳幼児健診・予防接種)
水曜日・土曜日午後・日曜日休み